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最高裁判所第一小法廷 平成2年(行ツ)36号 判決 1990年7月05日

東京都千代田区神田須田町一丁目一六番地

上告人

吉村株式会社

右代表者代表取締役

杉田雛子

右訴訟代理人弁護士

吉村徹穂

東京都千代田区神田錦町三丁目三番

被上告人

神田税務署長

玉田喜久男

右指定代理人

下田隆夫

右当事者間の東京高等裁判所昭和六三年(行コ)第九二号法人税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成元年一一月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった、よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉村徹穂の上告理由について

上告人の本件各事業年度における売上除外についての原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大堀誠一 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 橋元四郎平)

(平成二年(行ツ)第三六号 上告人 吉村株式会社)

上告代理人吉村徹穂の上告理由

本件の控訴審裁判は民訴法第一九一条第一項二号及び三号に違反し、当然列挙明示すべき理由が欠如している。

かくの如きは判断遺脱として民訴法第四二〇条第一項九号所定の絶対的再審事由とさえなる瑕疵であって違法の、取消当然の判決である。

一 見ての通り、控訴判決は第一審判決の主張及び証拠の摘示において六点、理由の点で二十四点、合計三十点に添削を加えているが、意味内容の変更を来す添削又は趣旨を新たにした添削は何一つなく、必要でない補足的加筆と計算間違い記載の書き違い等の正誤に止まっており、皮相的偽装修正にすぎない。次記の新しい二つの主張に対する判断が欠如していて判決として違法である。

二 控訴審では上告人は控訴理由として五つの主張をしているが(準備書面一二)うち二つは第一審にはなかった新主張である。曰く、『数的開差主張に対する判断欠如』の主張と『在庫帳の拡大分析』主張である。準備書面一二(控訴理由第四)と準備書面一三の(二)。

(イ) 『数的開差』の主張は第一審でも行われていた。が、これに対する判断が第一審判決で全くなされていないので、この第一審の判断欠如とこの絶対に棄却判断に結びつかない成立双方容認の証拠の判断を第二審で求めていた。この判断欠如に対する判断も将又証拠そのもの、価値判断も控訴判決で欠如しており、言及もない。この主張はその裏付証拠とともに後記在庫帳によるアリバイ的主張ほどではないが余程棄却趣旨に対して都合の悪い証拠なのか控訴審でも素知らぬ顔で無視されているのである。この判断欠落が控訴審で主張されていたことは記録の通りで、(控訴理由第四)再度にわたるこの無視をご審査賜りたい。

(ロ) 在庫帳の拡大分析は第二審にて初めて新代理人によって主張せられたものである。控訴審における第一三準備書面(二)の記載であって、この分析は精緻な数字により被上告人の主張に対抗、第一審判決の判断の甘さを鋭く指摘した。添削する控訴審判決の何れの部分も右の拡大分析を排除する理由となっているものはない。ぼう大な記録の読解を俟たずともこの素通りは本件控訴判決の違法な手抜きを示すものである。

三 第一審判決の理由の訂正だけで第二審判決となすことは最近の著しい傾向であるが第二審で重要な新しい主張が前記の通り展開されているのであるから、これらに全く触れず素通り、判示路線とは絶対に相容れず、且つ双方その成立に争いのない強烈な反証に対して何の顧慮も示さない控訴判決は違法で不当の常軌を逸した判決である。

当審では右二つの主張及びその証拠が何れも案件に疑問の余地を残さない重大反証であること、そしてその当否判断が控訴審でもことさら疎外されている点をご審査賜り適切の対応を命ぜられんことを望むのである。

裁判では憲法判断の省略は許されても悟性の論理法則に背違することは許されまい。両審の推断論理の飛跳につき、御庁のご審査に最後の望みを託するものである。

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